グラスウールってどんな断熱材?特徴をプロが解説|断熱リフォームの匠

コラム

投稿日 2023.12.12

断熱材

グラスウールってどんな断熱材?特徴をプロが解説

WRITER

WRITER

矢崎 拓也

環境省認定うちエコ診断士

大学卒業後、断熱にまつわる資格をいくつも取得し、自ら調査や補助金申請の手配、セルロースファイバーの施工から窓の取付まで行える業界でも異色の人物。「日本中の住宅性能の低さを解決したい!」と大きな夢を原動力に戸建住宅の断熱リフォームに取り組む。

こんにちは。《断熱リフォームの匠》の矢崎です。

今回は断熱リフォームでもよく使われる「グラスウール断熱材」について詳しく解説していきます。

断熱材にはさまざまな種類があり、その中でも最もメジャーなもののひとつがグラスウールです。

住宅を断熱を考える上で、真っ先に候補に浮上すると言っても過言ではありませんが、どのような特徴があるのでしょうか?

今回も一緒に勉強していきましょう!

グラスウールってどんな断熱材?

高性能グラスウール
グラスウール断熱材はガラスの原料であるシリカから作られます。

グラスウールの歴史は意外と古く、19世紀にガラス製造の副産物として生まれたと言われています。

ガラスを作る過程で発生した不純物や廃棄物を溶かして繊維状に引き延ばすことで、グラスウールが生み出されました。

それが発展し、今のより高性能なグラスウールボードになっていったというわけですね。

ちなみに日本でグラスウールが使われ出したのは第一次世界大戦が終わった頃で、ドイツから伝えられたのが始まりとされています。

住宅の断熱材に最適なグラスウール

グラスウール断熱材は住宅だけではなく、商業施設やオフィスビル、劇場、スタジオホール、工業施設など幅広い分野で使われています。

2017年の経済産業省による国内の断熱材シェアの調査によると、グラスウールは53パーセントと半数以上を占めており、とても人気な断熱材であることが分かります。

その理由として数多くのメリットがあり使い勝手がいいことが考えられます。

いくつかの具体例を挙げてみましょう。

高いコストパフォーマンス

グラスウールが普及した最も大きな理由はやはりそのコストパフォーマンスではないかと思います。

もともとグラスウールは不用物をリサイクルしようとする中で生まれた断熱材ですし、製造の過程で消費するエネルギーも少なくて済む、とてもエコな断熱材です。

また、無機質なガラス繊維であることから長い期間が経っても性能が落ちませんし、金属などと触れていても腐食の心配も少ないです。

そういえば最近ではお客様からも「断熱材の中には5年、10年と使っていれば劣化してしまうものがあるらしいが、グラスウールは大丈夫なの?」とご質問いただくこともあり、断熱材の知識が一般の方にも広がっているのを感じています。

もちろん正しい施工が大前提とはなりますが、グラスウールには将来にわたり断熱性能を落としにくいという、基本ではありますがとても大事な性質が備わっています。

耐火性能に優れている

グラスウールは綿のような見た目をしているので燃えやすそうに思えます。しかしグラスウールは無機質のガラス繊維であることから溶解温度が高く、火に対しても燃えにくい性質があります。

多くの国や地域では建築物に一定の耐火性が求められており、これらの建築基準に適合させる手段としてグラスウールが採用されることもあります。

また、グラスウールは無機物であるため燃焼時に有害なガスを発生しにくいです。このことから、万が一の火災においても安全性を確保できます。

吸音効果がある

グラスウールは、密度が低く、軽いため、音の反射や伝播を抑制し、防音効果があります。特に、集合住宅などの共用部分や、騒音が問題となる場所においては、有効な断熱材として使用されます。

取り扱いが簡単

グラスウールは柔軟性があることや軽い素材であること、人の手で簡単に切断や加工ができるといった特徴があることから取り扱いが比較的簡単です。

暖かさは「性能 × 厚み」で決まる


よくいただくご質問のひとつに「グラスウールは他の断熱材と比べて暖かいですか?」というものがあります。

これは、単純にイエス/ノーでは回答がしづらい質問ですので、以下でちょっと詳しく説明いたします。

断熱材の性能を評価するポイントは、

  • どれくらいの熱伝導率か
  • どれくらいの厚みか

 

のふたつです。

素材の性能が良くても商品として厚みが足りていなければ十分な性能は持っていないことになります。

いくら高価な断熱材を使用しても、設置されたものが十分な厚みを持っていなければ、安いけれども分厚く取り付けた断熱材に負けることになりかねません。

住宅の形状や特性に合わせて、安くても厚みを確保できる断熱材を選ぶか、高価なものを選択するかは分かれてきますので、単純に素材の種類だけで考えないようにしましょう。

どの程度の性能を目指すかは好みにもよりますが、1つの目安になるのは国が設けた基準です。

国は断熱材の性能ごとに等級を設けており、どの断熱材がどれくらいの等級に該当するのか、という視点で見るのがおすすめです。

また、国は家を建てる時に満たすべき断熱性能の基準を1980年に「省エネ法」という法律の中できめて以来、改正と基準の引き上げを繰り返してきました。

特に新築住宅では2025年以降はすべての新築住宅に「断熱等級4」以上の性能を持っていることが義務化されます。

もし既存住宅を断熱リフォームするのであれば、新築の基準レベルである断熱等級4を目指して改修してみるといいのではないかなと思います。

グラスウールの施工例〜床下の断熱リフォーム〜

グラスウール断熱材を用いて非破壊工法で床下の断熱改修を行った事例をご紹介します。

ボード状のグラスウール断熱材を点検口から床下に搬入し、1枚1枚床裏に充填していきます。

床下には換気口や基礎パッキンを通して外の冷たい空気が常に流れており、外気とほぼ変わらない寒さをしています。

断熱材を充填することによって床下の寒さが室内に伝わりにくくなり、足元の冷えの解消に繋がります。


床下で使用するグラスウールにはボード状のものの他に袋詰めのものもあり、こちらは壁内の空気の流れをなくす「気流止め」という施工に使われます。

特に築年数がある程度経った家屋は気流の対策がなされていない場合が多く寒さの大きな原因になります。

最近ではお客様から「気流の対策もしっかりやってくれるの?」とお話しいただく機会も増えてきており、断熱材の知識が世の中に広がりつつあるのを実感しています。

グラスウールにはカビが生えやすい?


古い住宅を開けた時に黒ずんでいる断熱材の写真がよく使われていることから「グラスウールは結露しやすいんじゃないか?」と疑問を抱くことが多いのだと思います。

ガラス繊維協会が発行する「検証」によると、住宅の壁を開けて壁内の黒ずんだ断熱材を顕微鏡で検証したところ、黒くなっているのはほぼ煤やホコリであることがわかったそうです。

また別のメーカーさんによると、黒カビの有無を培養試験で検証したところ、ほぼ空気中と同程度の濃度しか検出されなかったという結果も報告されているようです。

グラスウールが黒くなるのは空気が断熱材を通り抜けた時にフィルターとなって煤やホコリを溜め込むことから起きる現象であり、カビが繁殖しやすいというわけではありません。

床下の断熱材にも同様のことが言えます。

築年数が経ったお家で断熱診断をすると、垂れ下がって黒ずんだ断熱材を見かけることがあります。しかし床下は外との空気のやり取りが頻繁に行われているため、断熱材が黒ずむ傾向にあります。

しかしだからといって床下に断熱材を貼り付けるとカビが生えやすくなってしまうわけではありません。

ちなみに最近の断熱材は表面に「不織布」と呼ばれる透湿防水シートが貼られており、水分や小さなホコリを断熱材の内側に入れないような仕組みがなされています。

さいごに


今回はグラスウール断熱材について、特性や施工例、製品を選ぶポイントなどについてご紹介してきました。

お家の断熱性能を考える参考にしていただけたようでしたら幸いです。

もし疑問に感じたことがあるようでしたら、なんでも構いませんのでぜひお気軽にお問い合わせください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

トップ
施工事例一覧
断熱診断のながれ
お問い合わせ