「部屋を冷やしてエアコンを切って寝る」が「良くない」理由|断熱リフォームの匠
コラム
2022.08.01
寒さ・暑さ対策
「部屋を冷やしてエアコンを切って寝る」が「良くない」理由

WRITER

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矢崎 拓也
環境省認定うちエコ診断士

大学卒業後、断熱にまつわる資格をいくつも取得し、自ら調査や補助金申請の手配、セルロースファイバーの施工から窓の取付まで行える業界でも異色の人物。「日本中の住宅性能の低さを解決したい!」と大きな夢を原動力に戸建住宅の断熱リフォームに取り組む。
こんにちは。《断熱リフォームの匠》の矢崎です。
今回は夏場の「寝苦しさ」の原因についてお話したいと思います。
就寝前にあらかじめ冷房で部屋を冷やしておき、就寝直前に冷房を切って寝る。
一見すると涼しい部屋で電気代も節約できそうなこの方法ですが、実は大きな熱中症のリスクを抱えています。
熱中症データベースによると、熱中症の発生場所やタイミングについて「寝室・就寝中」は全体の32%を占めることが明らかになっています。
今回はその理由と対策について詳しくお話ししていきます。
壁や家具が熱を放つ!?

部屋を「キンキン」に冷やしたはずなのに、エアコンを消した瞬間一気に部屋が暑くなってきてしまう・・・という現象に心当たりはないでしょうか?
これは、昼間に強い日差しを屋根が浴び続けた結果、屋根裏空間はかなりの高温になっており、夜になっても冷めないまま室温に影響する状態になっているからです。
また、温められた壁や室内の家具の熱が冷めず、夜になっても熱を放ち続けていることも要因のひとつとなっています。
コンロの火から下ろしてもフライパンが熱いのと同じで、一度熱された物体はしばらく周囲に熱を放出しています。
同様に、建物全体が温められて熱を持っているので、その熱で自然と室温は温められてどんどん暑くなってしまうというわけです。
そんな環境でエアコンを使わないでいるのは、熱中症のリスクが当然上がってしまいます。
慶應義塾大学の調査で、高齢者50人を対象とした脱水率や体温のデータを計測したところ、熱中症の可能性が高い状態にあることがわかりました。
日本生気象学会で定められた熱中症予防指針による「注意」「警戒」「厳重警戒」「危険」という4つの区分けのうち、夜エアコンを使わずに過ごしている人の環境は「厳重警戒」に区分できるという結果が出たそうです。
エアコンを使わないとそれだけで熱中症の危険性が大きく上がってしまうことは意識した方がいいでしょう。
扇風機に潜む健康リスクとは?
「エアコンを使わなくて暑くなったとしても扇風機を使えば涼しく過ごせるのでは?」と思われるかも知れません。
しかし扇風機を使う時には注意しなければいけないこともあります。
そもそもエアコンと扇風機には大きな違いがあります。それは「体温を下げるか室温を下げるか」という点です。
室温を下げるエアコンに対し、扇風機は体温を下げるというわけですね。
つまり、扇風機を使えば涼しさを感じることはできても室温自体が涼しくなるわけではありません。
また、扇風機の風が局所的に当たり続けると汗の蒸発が進んでその部分だけ熱が奪われ、冷えや睡眠不足の原因になるとも言われています。
ある程度の風力が連続して体に当たり続けるのは、健康に悪影響を及ぼしますので注意しましょう。もちろん、このことはエアコンでも同じです。
どうしても扇風機だけを使いたい場合は、「肌に直接風を当てない」を意識して、しっかり服を着てから寝たり、扇風機の向きに気を付けるようにしましょう。
おすすめの暑さ対策は?
ではどのようにして寝るのがおすすめかというと、「エアコンと扇風機の併用」です。
扇風機のエアコンとの併用には、部屋全体の温度や湿度を均一にする効果があります。
就寝前までは同時に使うようにし、就寝の際は扇風機を切ってエアコン1本に切り替えましょう。
基本的にはエアコンは一晩中つけた方が途中でタイマーを使った場合に比べて睡眠の質は向上すると言われています。
とはいえ、もし「エアコンをずっと使っていると冷えすぎてしまう」という場合はタイマーを使ってもいいと思います。
その際は、タイマー入ではなくタイマー切を使うことをおすすめします。最低3時間を意識して使ってみましょう。
また、一晩中エアコンを使う際も、あまり温度を下げすぎると寝冷えの原因になったり、朝の体温上昇を阻害されて寝起きが悪くなってしまいます。
設定温度が何度が適切かはその人の体力や体格によっても微妙に変わってきますので、自分に合った温度調整をしてみましょう。
どうしても暑い場合
もし「冷房をつけているはずなのになぜか部屋が暑い・・・」という場合はエアコンに汚れが溜まっていることが考えられますのでしっかりと掃除をしましょう。
しかしそれでもまだ暑さを感じてしまうようであれば、それは部屋の「断熱性能」の低さが原因だと考えられます。
室外の暑さで建物の表面温度が上昇して熱を持ち、やがてその熱が壁を通って室内に伝わり、やがて放射熱で室温はどんどん上昇していきます。
そんな時は建物の断熱性能を高めるための対策を行う必要があります。
「窓」に注目してみましょう。窓は外部からの熱がとても入りやすい場所だからです。
最も手軽に行える対策は日中にカーテンを閉めることです。また、室外にすだれやシェードを設置するのもおすすめです。
より効果を得るために
費用がかかる代わりに特に大きな効果を得られるのは内窓の取り付けや天井等の断熱リフォームです。
内窓は暑さ対策になるだけでなく冬場は寒さ対策としても非常に活用できますし、防音や防犯といった副次的な効果も期待できます。
断熱材には部屋の外側からの熱を室内に伝わりにくくする働きがあり、冷房の効きがよくなる、エアコンを消した後も部屋の温度が上がりにくくなるといった効果があります。
どちらも家での居心地が格段に良くなりますので、費用はかかるもののそれに見合った効果を得ることができるでしょう。
これらの工事は一見大掛かりになると思われがちですが、非破壊工法であれば大抵は1日で完工させることが可能です。
断熱リフォームの方法や詳細についてはこちらで解説していますので、合わせてお読みください。
家の中が暑いのは、仕方がないものではなく、我慢するものでもありません。
リラックスするための自宅なのに、「暑さ」というストレスを浴び続けることは、身体的にも精神的にも健康的とは言えないとは思いませんか?
家の「暑い」は解決できる悩みですので、夏でも涼しく過ごすため、対策をしてみてはいかがでしょうか?
ここまでお読みくださった方は、以下のページもお読みいただくと、より具体的に対策を知ることが出来ます。
長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。