寒さをガマンする人が知らない「低体温症」の健康リスク|断熱リフォームの匠

コラム

投稿日 2023.02.27

建物・暮らしの知識

寒さをガマンする人が知らない「低体温症」の健康リスク

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廣澤 健一郎

環境省認定うちエコ診断士

地方公務員を経て、テオリアハウスクリニックに入社。前職の経験から断熱に関する補助金の取り扱い業務に精通しており、これまでに国や地方自治体の補助金手続きを多数経験。 書類の作成だけではなく、自ら現場に出て調査・工事に携わるなど、断熱の実務経験も豊富で、これまでに点検訪問した住宅は1,500件を越える。

こんにちは、《断熱リフォームの匠》の廣澤です。

今回は最近よく話題にあがる「低体温症」について解説していきます。

あまり知られていませんが低体温症は生命の危険すらある非常に危険な症状で、2020年には900人近くの死亡者が報告されています。

しかもこれらは寒い地域だけでなく、関東以南の都市部でも普通に発生しているのです。

低体温症による不慮の事態を防止するため、この記事を役立てていただければ幸いです。

分かりやすい解説を心がけますので、しばしの間お付き合いください。

知ってるようで知らない、低体温症の発生メカニズム


本来、人の体温(深部体温)は36度前後であり、外が暑くても寒くても基本的には常に一定に保たれるようになっています。

これは身体の内側から発する熱を外に逃したり保温したりといった調節を自律神経が自動的に行ってくれているからです。


冬の寒い時期に手足などの末端が冷えるのは、深部体温を維持するために中心から遠い部分の保温を後回しにしているからなのです。

しかしやはり長時間にわたり低温にさらされ続けるとそういったやりくりだけでは限界が訪れ、深部体温の維持すらも難しくなってしまいます。


深部体温が慢性的に36度の水準を下回ることで発生する、さまざまな身体の不調が「低体温症」というわけです。

本来、人間の身体は様々な異常に対処できるようになっているのですが、許容範囲を越えれば正常に動かなくなってしまうのです。

実はこれも!?低体温症の意外な症状

低体温症の症状は、ただ単に寒くて震えが止まらないといったようなものではありません。

  • 口が回らなくなる
  • 意識がもうろうとする
  • 体の震え
  • 呼吸・脈拍の乱れ

 
など、一見すると他の様々な病気にも似通った症状であることが分かります。

よく見ると夏場における熱中症とも似ていますね。

夏の熱中症、冬の低体温症はどちらも正常な体温を維持できなくなるために起こる症状と言えるかもしれません。

低体温症の”すごく身近な”発生場所


低体温症と聞くと、すぐに思い浮かぶのは「雪山での遭難」とか「船の事故で長時間水に浸かり続ける」といったイメージである人は多いのではないでしょうか?

それらはもちろん正解なのですが、実は低体温症はより身近なところでも発生するリスクがあります。

それが「室内」です。

暖房をしない部屋でじっとしているだけでも知らず知らず体温を奪われ、低体温症に陥ってしまう危険性があります。

特に今年は、ガス代も電気代もずっと値上がりを続けている社会情勢があります。

光熱費がかさむからと暖房の使用を控えるようになると、自然と低体温症のリスクが高まってしまうのです。

室内での厚着が低体温症のリスクを上げる理由

また、暖房費を節約しようとして室内で厚着をして過ごすのもオススメはできません。

厚着をすると身体が圧迫され、血流が悪くなる原因となります。

また大量に着込んでいると動くのが億劫になり、結果的にじっとしていることになるため、低体温症の症状に陥りやすくなってしまうのです。

良かれと思って取った行動が、実はことごとく裏目に出てしまうのは悲しいことですね。

今日からできる!低体温症から身体を守る小さな取り組み

では、どうすれば低体温症のリスクを下げることができるのでしょうか?

何よりも注意すべきポイントは、身体を冷やさないことです。

身体の内部で熱を作ることには限りがあるわけですから、やはり考えるべきは「身体から熱が逃げていくきっかけを少なくする」ことになります。

  • お風呂上がりにはすぐ髪を乾かす
  • 首まわりを冷やさない
  • ゆったりとした服を着る(厚着しない)

 
意外とこういったことをするだけでも、低体温症の防止につながります。

毎日の行動ひとつひとつの積み重ねが大切ですね。

最も基本!低体温症のリスク下げる食習慣

それから、最も基本的な対策として、暖かい食事や飲み物を摂ることを心がけましょう。

体内から暖かくする食事は、寝ている間の低体温症を防止するためには非常に大切なことです。

ショウガ・根菜・温かい飲み物などは身体を暖かくする効果があるので積極的に摂ることで低体温症の予防に繋がります。

暖かい飲み物の代表例はココアや生姜湯などで、末端の血行を促進させることから体温の上昇効果が期待できます。

反対にアルコール類は一時的には身体が温まるように感じられるものの、体温調整機能の低下や血管収縮による末端の冷えの原因となります。

くれぐれも「暖房の効いていない部屋で寒さを紛らわすためにお酒を飲む」といった行為は避けたいところですね。

目先の節約で抱える将来の”爆弾”


「冷えは万病のもと」という言葉は、実際のところかなり的を射た表現だと思います。

どんな病気でも、診察を受けると「身体を冷やさないように」とお医者さんから言われることがとても多いのではないでしょうか?

光熱費が高いからと言って、無理な節約をすると、かえって低体温症や他の様々な病気を引き起こします。

節約のために暖房を控えて、低体温症で入院してしまっては、暖房費の何倍もの医療費を負担することになりかねません。

節約を考えすぎるあまり健康を損ねたり命を落としてしまっては、それこそ本末転倒です。

やはり大事なのは「長期的に見て得をするのか?」という視点だと思います。

超重要!低体温症の”根本的”解決方法

低体温症を予防する重要なアプローチは、「冷気に長時間さらされる状態を作らないこと」です。

そもそも暖かい部屋であれば体温が下がりにくくなるわけですから、意識的に身体を冷やさないように工夫を考える必要もなくなりますし、おのずと低体温症のリスクも下がるので根本的な対策となります。

「心配事を考えずに日々を穏やかに過ごしたい!」と考えておられるようでしたら、これからご紹介する方法を参考に、冷たい空気を感じない暖かい部屋づくりに挑戦してみてはいかがでしょうか。

日差しを取り込む


室温を上げるためにも、日中は日差しを十分に取り込みましょう。

カーテンを開けて、日差しを室内まで入れることで、暖房を使わなくても室内の温度を上げることができます。また、日が差さなくなったら早めにカーテンを閉めるようにしましょう。

そのままカーテンを開けていると、せっかく取り込んだ日射熱が今度は窓から逃げていってしまいます。

また、窓のそばにベッドや布団を敷いて寝ている方は、窓から離れたところに移動することも考えましょう。

冷え切った窓からは、冷気流が室内に入り込んでくる(コールドドラフト現象と呼ばれます)ため、低体温症になりやすくなってしまいます。

空気を循環させる


お手軽な対策としてオススメなのが、「空気を循環させる」ことです。

冷たい空気は下に降りて、暖かい空気は上昇するという特性があるので、暖房をつけていても足元は冷たくなりがちです。

そこで、サーキュレーターなどを使い、室内の空気を循環させる、つまり足元の空気を天井側に流すことで、天井付近の暖かい空気を下方へ呼び込むことができます。

また、冷気が入ってきやすい窓には、厚手のカーテンを購入して取り付けるのも効果的です。

このときに、カーテンが引きずるくらい長めに用意すると、隙間からの冷気まで抑え込めるのでぜひ試してみてください。

カーペットやラグを敷く


フローリングの上にカーペットやラグを敷くことも、単純ですが効果があります。

オススメは、ホームセンターでジョイントマット等を買ってきて、隙間なく敷き詰めることですね。

冷たい床にそもそも触れなくなるだけでも、体感的には随分と楽に感じるはずですので、応急措置としてはかなり効果的です。

実は建物も低体温症になっている!?


人間の身体と建物はよく似ているなと思います。

そもそも家が寒い原因は、「冬だから」ではありません。

冒頭でお話しした「深部体温」をイメージしてみてください。

外気温の影響をもろに受ける建物ではいくら室内で熱を作っても外にどんどん逃げていくため、室内はずっと寒さを感じやすい空間のままです。

これこそが部屋の寒さの大きな原因であり、最も深刻な問題なのです。

建物から熱を逃げづらくすることで、少しの暖房だけでも暖かくなりますし、家そのものから低体温症の原因を取り除くことができます。

具体的な方法として効果的なのが「断熱リフォーム」です。詳しい解説はこちらにも掲載していますので、ぜひ合わせてお読みください。

まとめ

今回は低体温症のリスクと対策について解説しました。

日々の行動や少しの工夫でも低体温症を防ぐ効果がありますので、できることから取り組んでいくのが大切です。

また、本来であれば真っ先に疑うべき「家が寒いこと」そのものにはあまり目を向けられていない現状があります。

特に日本では「冬の家が寒いのは仕方がない」と考える風土がありますが、断熱リフォームを通して暖かくて健康な家の素晴らしさを感じてもらうことが私たちのミッションだと日々の業務で強く感じております。

今回ご紹介した内容が少しでもお役に立てれば幸いです。

ここまでお読みくださり、ありがとうございました。

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