断熱材の小さな隙間が命取りとなる理由【工事を行う上での注意点】|断熱リフォームの匠

コラム

2018.10.10 / 2021.05.24

断熱材

断熱材の小さな隙間が命取りとなる理由【工事を行う上での注意点】

天井断熱セルローズ

WRITER

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矢崎 拓也

環境省認定うちエコ診断士

株式会社テオリアハウスクリニック入社後、断熱事業に携わる。現在は既存住宅の断熱調査を中心に、セミナー講師や各媒体からの取材など、社内の断熱体制強化にも取り組む。

断熱材を施工するにあたり、断熱層を連続させることが一番大切であると言われています。小さな隙間が断熱材の間にできてしまった場合、様々な問題が発生します。今回はそれらについて紹介した上で、その問題に対して強みとなる断熱材として、セルローズファイバーの長所についてもご紹介していきます。

内部結露の問題

断熱材の内部結露

壁や天井裏に断熱材を施工する際に、隙間が原因で発生する問題点として、内部結露が挙げられます。国土交通省監修の、平成25年「省エネルギー基準に準拠した算定・判断の方法及び解説」では、透湿抵抗の小さい断熱材を使用する場合は、断熱層への漏気や水蒸気の侵入を防止するための防湿層を断熱層の内側に設けなければいけない、とされています。これは壁の内側に、室内の生活空間で発生する湿気が侵入し、壁の内部に結露が発生するのを防止するためです。グラスウールやロックウールなどの断熱材は、湿気を含むと中々外に放出せず内側に溜め込んでしまうので、カビの繁殖や腐食発生の原因となります。多くの断熱材にとって湿気は天敵で、内部結露は重要な問題であるということを覚えておきましょう。

気密シートを張れば安全か?

防湿層の役割を果たす気密シートを張れば、部屋内部からの湿気の流入を防ぐことが出来ます。また、断熱層のすぐ外側には通気層があり、多少の水蒸気であれば結露が発生する前に空気中に逃がすことができます。しかし、断熱層に隙間があったり、窓まわりや配管の貫通部など、防湿層の施工に不備があれば、壁内への水蒸気の供給と通気層からの放出のバランスが崩れ、内壁の湿気が飽和状態になり内部結露が発生してしまいます。また、結露水を含んだ断熱材はその重みでずり落ちてしまい、発生した隙間が原因で更に断熱欠損が起き…と悪循環になってしまいます。

熱橋・断熱欠損の問題

熱橋(ヒートブリッジ)とは、断熱材の切れ目に存在する柱などが熱を伝える現象の事です。まず熱伝導率について説明をします。熱いコーヒーも時間が経てば冷めてしまうように、熱は高温から低温へと移動をします。熱伝導とは熱が物体の中を通って高温から低温へと移動をする事をいい、熱伝導率とは、その物質の熱伝導のしやすさを表します。代表的な物質の熱伝導率の一覧を表に示しました。

物質

熱伝導率 W/(m・k)

84

コンクリート

1.6

木材(ヒノキ・杉など)

0.12

グラスウール(16K)

0.045

 

例えば木材の値は鉄に比べ1/700程度であることがわかります。これは木材は鉄に比べ熱の伝わりやすさが1/700程度であることを意味します。フライパンの持ち手に木が使用されていると手元が熱くなりにくいのはこの為です。しかし、その木材とグラスウール(16k)断熱材の数値を比較すると、グラスウール(16k)断熱材は木材より更に3倍ほど熱が伝わりにくい事になります。

断熱欠損と熱橋

ここで先程の熱橋の問題ですが、民家に侵入しようとする泥棒をイメージすれば理解しやすいと思います。いくら正面の門に厳重に鍵が掛けられていても、裏口の扉が空いていれば、そこから難なく出入りをされてしまいます。断熱材本体の熱伝導率が低くても、熱はより熱伝導率の高い木材を通って移動を行います。その様子が熱が橋を渡って移動しているように見えるので、熱橋と呼ばれているのでしょう。内部結露の問題でも紹介した「省エネルギー基準に準拠した算定・判断の方法及び解説」では「断熱材は、必要な部分に隙間なく施工すること。」とあります。断熱材の寸法が大きすぎて施工箇所にへこみが出来たり、逆に寸法が小さすぎて隙間ができ断熱性能が低下すると、熱はそこをどんどん通過して逃げていくので、断熱性能は大幅に低下します。断熱材の品質を最大限に発揮するには、そのような細かい隙間を作らない丁寧な作業が命であると言えるでしょう。

セルローズファイバーは吹き込み式の断熱材で隙間なく施工でき、欠損が起きにくい

天井断熱セルローズ

断熱欠損を起こさないように隙間なく断熱層を作る必要があると分かってはいても、実際には施工そのものが難しい場合もあります。例えば、筋交い部にマットタイプのグラスウールを充填する場合は、筋交いの後ろに断熱材を充填しただけだと、断熱材のへこみにより小さな隙間ができ断熱欠損の原因となるので、それを防ぐためにグラスウールの表面に切り込みを入れ、筋交いと同面まで盛り上げる必要があります。プレカットされているボードタイプの断熱材も、コンセント部や配管部など、正確に大きさを調整するのは難しいでしょう。セルローズファイバーは粉末状の断熱材をブロワーで吹き込み充填させます。たとえ施工箇所が複雑な形状をしていても、その形状から隙間のない施工を行いやすいため、断熱欠損が起こるリスクを大幅に下げることができます。

セルローズファイバーは調湿効果を持ち内部結露にも強い

先程紹介したように、グラスウールやロックウールは壁内に湿気が進入すると、湿気を貯めて壁内を常に水分がある状態にしてしまうので、カビや腐食の原因である内部結露のリスクを高めてしまいます。九州大学のセルローズファイバーを用いた壁体の調湿効果に関する研究で、セルローズファイバーは厚み次第で、湿度の吸放湿効果を持っているという結果を発表しています。壁内の湿度が上がったときに断熱材が湿気を吸収するので、内部結露を防止することができます。また、吸収した湿気は適度に放出するので、調湿効果が期待できます。

まとめ

いくら断熱材の性能が良くても隙間ができてしまうと、本来の性能を活かせないばかりかカビや腐食のリスクも抱えてしまうことになります。セルローズファイバーは隙間のない施工ができるだけでなく、調湿効果も持っており、断熱欠損や内部結露のリスクが低い断熱材として注目されています。その他にも様々なメリットがるので気になる方はこちらを参照してみてください。

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しかし、たとえセルローズファイバーを使っていたとしても、充填方法や十分な量の吹き付け等の基準を満たしていなければ、やはり他の断熱材と同様に、様々なリスクを負うことになります。しっかりと施工を行ってくれる業者に施工を依頼しましょう。