窓リフォームの「はつり工法」とは?カバー工法との違い・メリット・注意点をプロが解説|断熱リフォームの匠
コラム
投稿日 2025.09.19
内窓・窓リフォーム
窓リフォームの「はつり工法」とは?カバー工法との違い・メリット・注意点をプロが解説

WRITER

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廣澤 健一郎
環境省認定うちエコ診断士

地方公務員を経て、テオリアハウスクリニックに入社。前職の経験から断熱に関する補助金の取り扱い業務に精通しており、これまでに国や地方自治体の補助金手続きを多数経験。 書類の作成だけではなく、自ら現場に出て調査・工事に携わるなど、断熱の実務経験も豊富で、これまでに点検訪問した住宅は1,500件を越える。
「窓の交換を考えているけれど、我が家はカバー工法では対応できないと言われた」
「そもそも、はつり工法って何のこと?」
窓リフォームを検討している方の中には、このような疑問や不安を抱える方が少なくありません。実際、窓の交換工事には大きく分けて「カバー工法」と「はつり工法」の2つがあり、それぞれ工事内容やメリット・デメリットが異なります。
本記事では、特に「はつり工法」に焦点を当て、カバー工法との違いや採用されるケース、注意点などをプロの視点からわかりやすく解説していきます。
目次
窓のはつり工法とは?
はつり工法とは、既存の窓サッシを枠ごと完全に撤去し、新しい高断熱窓に入れ替える工法です。


窓サッシは「ガラスとそれを囲む枠」(障子)と「壁に接合されたフレーム」(窓枠)によって構成されています。障子は簡単に取り外せるものの、窓枠は住宅にがっちりと固定されており、取り外すには外壁の一部を剥ぎ取らなければなりません。

「はつり作業」を伴うリフォームというのは基本的には大掛かりな工事となり、壁の一部を切削する際に騒音や粉塵も発生します。
従来は窓交換といえばこのはつり工法が一般的でしたが、工期が長く、費用も高額になりがちであったため、大規模リフォーム時にあわせて行われるケースが多い手法でした。
カバー工法との違い
現在では「カバー工法」と呼ばれる窓リフォームが普及してきており、窓の交換と言うとその多くがカバー工法によって実施されています。
カバー工法は、簡単にいうと既存の窓枠をそのままに、上から新しい窓枠を被せて取り付ける新しい窓リフォーム手法です。両者の違いを整理すると以下のとおりです。
- 1.工法
- ・カバー工法は既存窓枠を壊さずに新しい窓枠を被せて施工する。
・はつり工法は既存の窓枠ごと取り外し、窓全てを交換する。 - 2.工期
- ・カバー工法は1ヶ所あたり半日〜1日。
・はつり工法は外壁工事が必要になり、3日〜1週間ほどかかる場合がある。 - 3.費用
- ・カバー工法ははつり工法よりも安価。
・はつり工法は外壁補修などが加わるため高額になりやすい。 - 4.外観
- ・カバー工法は外壁を壊さない分、窓が一回り小さくなる。
・はつり工法は外壁まで工事するため、窓は小さくならない。
「カバー工法」と「はつり工法」の最大の違いは、工事負担の少なさです。カバー工法では窓の「障子」は撤去しますが、「枠」は壁に接合されたまま残します。
そして、その上から新しい断熱タイプの枠を被せていき、高断熱のガラスをはめ込む形で交換工事をしていきます。壁を削る作業が不要になっていることから、工期は1ヶ所ごとに半日から1日程度にまで短縮されることになりました。
従来の手法であるはつり工法の場合、古い窓のフレームをすべて取り除く必要があり、外壁を削り取る作業が不可欠になるため窓業者のみでは対応ができません。窓業者の他に外壁の業者や大工が携わることとなり、当然ながら窓をはめ込んだ後に削った壁を修繕する作業も必要となります。


また、2階以上の窓をはつり工法により交換する場合には、塗装工事などで使用する仮設足場を組み立てなければなりませんので、足場業者も呼ぶ必要があります。結果として工期は3日から1週間程度は必要になることもあるため、必然的にその分の工事費用がかかるわけですね。
はつり工法が選ばれるケースとは?
上記の情報だけだと、はつり工法はもはやリフォーム工事で採用されないのではと思うかもしれませんが、実はそうではありません。はつり工法でないと窓の交換が実現できないという場合も存在するのです。
防火地域・準防火地域の住宅
準防火地域以上のエリアに建つ住宅の窓には、「防火設備」の設置が求められます。ここでいう防火設備というのは、いわば防火窓のことですね。
カバー工法用の窓商品には「防火設備」として国の認定を取得したものがないため、リフォーム方法として採用できない、という訳です。

つまり、防火設備を要求される窓を断熱窓に交換するためには、新築用の防火タイプの断熱サッシにそっくり入れ替える必要が出てきます。こういった場合にはカバー工法では交換ができず、はつり工法を採用する必要があるわけですね。
窓サイズを小さくしたくない場合
カバー工法では枠を残すためガラス面が上下左右5~8cmほど小さくなります。採光を重視するリビングや小窓では違和感が大きいため、はつり工法が選ばれることがあります。

現在では新設する枠がスリムなカバー工法商品が開発されるなど、デメリットを補うタイプのものも登場しているものの、古い枠を残してカバーする手法である以上、どうしても段差はできてしまうこととなります。
はつり工法のデメリットと注意点
- 工期が長い:数日〜1週間かかるため、生活に影響が出やすい。
- 騒音・粉塵:外壁を削るため騒音やホコリが発生し、近隣への配慮が必要。
- 費用負担:足場・外壁補修が加わるため、カバー工法より高額になるケースが多い。
- 仮住まいが必要な場合も:数日にわたり窓が使えないため、家具移動やセキュリティ対策、場合によっては仮住まいの検討も必要。
はつり工法を検討する際の注意点は、先述のように工期が長くなる傾向にある点が最大のポイントだと思います。住宅を大規模リフォームする場合には思い切ってはつり工法でも良いかもしれませんが、カバー工法で交換ができるのであれば、そちらを採用する場合が大半を占めると思います。
また、外壁を壊す工事を含む以上は、その削る作業に伴い発生する騒音や粉塵が近隣に影響を与えることも考慮しなければなりません。


トラブルにならないよう、事前に声掛けをするなどの配慮は必要ですし、数日にわたり窓が無い状態になる以上は、家具等の移動、貴重品の管理などに十分注意する必要があることも忘れないでください。
場合によっては仮住まいへの引っ越しなども考慮に入れることとなるため、はつり工法に伴う費用負担がどの程度必要になるのかは、より慎重に見極める必要があるでしょう。
補助金活用の可能性
現在、国の「先進的窓リノベ事業」では、はつり工法(外窓交換)が補助対象となっています。対象は高断熱サッシ(Uw値1.9以下など性能要件あり)で、窓サイズごとに数万円〜十数万円/箇所の補助を受けられます。
はつり工法は費用負担が大きい分、この補助制度を活用することでコストを抑えやすくなります。
窓の性能区分 (Uw) |
大(L) 2.8㎡以上 |
中(M) 1.6~2.8㎡未満 |
小(S) 0.2~1.6㎡未満 |
---|---|---|---|
P(SS) (1.1以下) |
183,000円 | 136,000円 | 91,000円 |
S (1.5以下) |
118,000円 | 87,000円 | 59,000円 |
A (1.9以下) |
92,000円 | 69,000円 | 46,000円 |
※新たに施工する窓の性能に応じて1製品ごとに上記補助が出ます。
まとめ
今回は窓リフォームにおける「はつり工法」について解説しました。
従来からある交換方法のため、ほとんどの窓の交換に採用できますが、大規模な工事になりがちでその分の費用負担や工事日程の長さが無視できない手法になっています。
カバー工法によるリフォームの方が様々な負担を小さくすることができますので、窓の交換を考えるのであればカバー工法をメインに検討をはじめた方が良いでしょう。
とはいえ、防火地域の住宅である場合や、他にもカバー工法では克服できないような制約がある場合には、他の選択肢としてはつり工法を候補に加えることも重要です。
費用負担と断熱性能の向上を見極めつつ、状況によってはカバー工法や内窓の設置などの別の工事とうまく組み合わせながら、住宅の快適性向上を実現していきましょう。


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