床下断熱リフォームってどんな効果があるの?施工前後の違いを検証!|断熱リフォームの匠

コラム

投稿日 2018.08.29 / 更新日 2024.10.21

断熱リフォーム

床下断熱リフォームってどんな効果があるの?施工前後の違いを検証!

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矢崎 拓也

環境省認定うちエコ診断士

大学卒業後、断熱にまつわる資格をいくつも取得し、自ら調査や補助金申請の手配、セルロースファイバーの施工から窓の取付まで行える業界でも異色の人物。「日本中の住宅性能の低さを解決したい!」と大きな夢を原動力に戸建住宅の断熱リフォームに取り組む。

「床下断熱リフォームってどんな効果があるの?」
「断熱材を床下に追加して意味はあるの?」

床下断熱リフォームを検討中の方の多くはこのような疑問をお持ちです。私たちとしては、冬に家の中で「足元が冷える」や「暖房をつけても肌寒さがなくならない」と感じている人にこそ床下断熱リフォームを実施してほしいと思っています。

そこで今回、実際の住まいで「床下断熱リフォーム前後の床の表面温度」を比べる実験を行いました。この結果を通じて、断熱材を変えるだけでどれほど違いが出るのかが実感できるはずです。実験はテオリアハウスクリニックの研修所と一般住宅で行いましたので、その結果をレポートします。

床下断熱リフォームに寒さ改善の効果がある理由

早速実験の結果をご紹介…といきたいところですが、その前にまずは「なぜ断熱リフォームで寒さが改善されるのか」について少しだけご紹介しておこうと思います。

暖房を使っても足元が冷たいままなのは、外から冷たい空気が床下に入り込んで床や壁を冷やしているからです。家自体が冷えていると、どんなにエアコンで室温を上げても寒さはなくなりません。

冬に部屋が寒くなる理由の図

断熱材の役割は、外の冷たい空気を遮断して建物を守ることです。多くの人は断熱材を「暖かい空気を逃がさないためのもの」と考えがちですが、実際には外気を防ぐことが非常に大切なんです。もし「暖房をつけているのに足元が冷たい」「上半身は暖かいのに足元が寒い」と感じるなら、床下の断熱が不十分かもしれません。

実際、日本の家の約8割が断熱性能不足というデータもあります。新しい家でも断熱が十分でないことは珍しくありません。

床下断熱リフォームをすれば、床下の隙間を埋めて保温力を高め、足元の冷えを感じにくくなります。また、効率よく暖かさを保つことができるので、暖房費の節約にもつながります。

床下断熱リフォームの効果を検証!

ここまでで、なぜ床下断熱リフォームが寒さ対策に効果的なのかをご説明しましたが、実際にどれくらい効果があるのか気になりますよね。ではここからは、実際の床下断熱リフォームの効果がどのように現れるのか検証結果を見ていきましょう。

①研修所(木造住宅)編

まずは私たちが研修に用いている建物で行った実験の様子をご紹介していきます。築30年以上、木造2階建てのごくごく普通な住宅です。

使用した木造家屋

(写真)まずはこちらの一軒家で検証を行った。

(写真)左側に断熱リフォームを実施し、右側の未施工部と表面温度を比較する。

 
こちらの検証では、一部屋のうち半分にだけ断熱材を入れて床の温度の違いをみていきます。”断熱施工エリア”と”未施工エリア”は上記図面のように範囲を設定しました。こうすることで、エアコンで均一に暖められた同じ室温の部屋の床の表面温度がどれくらい違うかを確かめることができるわけです。

(写真)グラスウールが施工されているが劣化している上に隙間も多い。

(写真)ほとんどの場所は全く断熱材が入っていない状態。

 
上写真は施工前の床下の状態です。グラスウールという断熱材が施工されているものの、隙間だらけでこれでは断熱材の効果を期待することはできない状況でした。また、ほとんどの場所に断熱材が入っていないことも見て分かります。

断熱材が入っていなくて「寒い訳だ…」となるのはもちろんですが、仮に断熱材が入っていたとしても施工品質劣化具合元々の断熱材の性能などによっては断熱効果を得ることができていない場合があります。この研修所もまさにその状態で、断熱材が入っていないのとほとんど同じレベルでした。

床下断熱リフォームの実施

それでは、床下断熱リフォーム工事の様子を見ていきましょう。使用する断熱材はアクリアUボード(旭ファイバーグラス製)というボード状グラスウールです。この断熱材は断熱リフォームの匠が普段の施工でも使用しています。

アクリアUボード

(写真)アクリアUボードピンレス。床下のサイズに合わせてカットして使用する。
アクリアUボード

(写真)大きさは長さが約90cm、幅が約45cm。床下点検口から搬入できるサイズだ。

 
ところで何故この断熱材を使っているかというと、床下施工と非常に相性がいいからです。断熱リフォームの匠は「非破壊工法」と呼ばれる床を剥がさず施工スタッフが床下に進入して作業を行う工法を採用しています。ある程度の柔らかさをもったボード状グラスウールを使うことで、非破壊工法を効率的に行うことができます。

気流止め

まず、ボード状グラスウール断熱材の施工の前に、気流止めという作業を実施します。これは、床下からの断熱リフォームにおいて最も重要な作業です。なぜかというと、断熱材が本来の性能を発揮できるかを大きく左右する要因だからです。

床下は想像以上に隙間だらけです。隙間をそのままにすると、外から入ってくる冷たい空気の流れを止めることができません。断熱材を取り付けても、その効果が非常に小さいものになってしまうのです。断熱の効果を高めるために、気流止めの施工をしっかりと行っていきます。

気流止めの設置後はいよいよボード状のグラスウール断熱材の施工です。大引き材という床を支える横架材の間に隙間なくはめ込んで固定していきます。

断熱材の施工後

断熱材を施工するとこのようになります。断熱材の厚みが80mmなので、大引材の下面と断熱材の下面が同じ高さになります。

これで計測の準備は完了ですが、実際に家が寒く感じるのは夕方~朝方です。起床して朝食をとったあと、リビングでくつろぐ時間を想定して9時ごろに計測してみます。

表面温度の計測

計測は1月17日、真冬に実施しました。朝9時の外気温は3.6℃。実施した当社研修所のある千葉県八街市ではなかなかの寒さです。計測には部屋の両サイドに温度計を置き、エアコンで2部屋を同時に暖め両方の温度が18℃以上で均一になったところでサーモグラフィで比較します。

2017年1月17日AM9時
外気温:3.6℃
室温:18.5℃
暖房器具:エアコン(2台)
床の材質:クッションフロアー
未断熱の床面

(写真)未断熱(キッチン側)のエリアの床面
断熱した床面

(写真)断熱済みの部屋の床面

 
写真が荒いですが、サーモカメラの画像を使っているためです。床の仕様も同じになるようにクッションフロアをどちらの部屋にも貼っています。写真だとどちらの床も寒そうに見えますが、この画像をサーモグラフィで見てみると…。

未断熱の床面のサーモ

(写真)未断熱(キッチン側)のエリアの床面
断熱済みの床面のサーモ

(写真)断熱済みの部屋の床面

 
なんと、5〜6℃もの差が生じました。たとえ実施する前から結果がわかっていたとしても、実際に実験してみて数値としてその差を確かめる事ができると嬉しいものです。

無断熱の部屋のサーモグラフィ画像は、床面が冷たくて上だけ暖かいという現象が可視化されています。「足元が寒い」というのは、まさにこの現象がお部屋で発生しているからなのです。

②ツーバイフォー住宅編

自社研修所で床下断熱リフォームの効果を確かめたときは、約6℃の床表面温度のアップという結果になり大きな改善効果がありました。では、違う構造や違う築年数の建物でも同じように効果を得ることができるのでしょうか。次にツーバイフォー住宅での検証結果をご紹介します。

施工データ
構造:ツーバイフォー
所在地:東京都江戸川区
所要日数:1日

事前点検の際、1階の床面温度をサーモカメラで確認しました。エアコンを稼働させて室温は20℃に保たれているにもかかわらず、床面の表面温度は13~14℃程度。部屋全体の温度に大きなムラがあることが判明しました。

施工前の床表面温度

(写真)施工前のサーモ画像。温度差があることがわかる。

(写真)床下の断熱状況。断熱材が下がっている。

 
そのため、床下に潜って断熱材の状態を確認したところ、根太間に施工されたウレタン系の断熱材が経年劣化により垂れ下がっており、その隙間から断熱効果が失われていることがわかりました。「隙間=断熱欠損」とよく言われるように、どんなに断熱材が入っていても、隙間があればその効果は著しく低下してしまいます。

そこで今回は、既存のウレタン系断熱材を活かしつつ、その下に新たな断熱材を追加施工することで、床下の断熱性能を強化しました。これにより、元の断熱材の性能も最大限に引き出し、効果的な断熱が可能となります。

床下断熱リフォームの実施

この物件でも床下断熱リフォーム用のアクリアUボード(高性能グラスウール)を使用します。今回の建物はツーバイフォー住宅のため、根太間に断熱材を施工していきます。

断熱材の搬入

(写真)床下断熱材を床下点検口から搬入する。
床下での断熱材搬入

(写真)奥まで断熱材を施工スタッフ自ら運んでいく。

 

床下の断熱施工

(写真)根太の間に断熱材を施工する。
タッカーで断熱材を固定する

(写真)はめ込んだら落下しないようにタッカーで固定する。

 

施工前と施工後の様子を写真でご紹介していきます。

施工前

(写真)施工前。
施工後

(写真)施工後。

 

配管まわりの施工前

(写真)配管周りの施工前。
配管周りの施工後

(写真)配管周りの施工後。

 

細かい場所の施工前

(写真)複雑な箇所の施工前。
細かい場所の施工後

(写真)複雑な箇所の施工後。

 

断熱リフォーム前後で床の温度を比較

施工は床下空間全体を実施しました。今回は施工後のデータに関してもご協力いただけたため、翌朝にサーモカメラを使用して床の温度がどうなったかを調べてみました。

施工前の床表面温度

(写真)施工前(外気温7.2℃)
施工後の床表面温度

(写真)施工後(外気温5.4℃)

 
同じ条件下でのデータがほしかったので、事前にエアコンで室温を20度にしたうえで計測しております。施工後の方が外気温が低かったものの、それを踏まえても床表面の温度に大幅な改善が見られました。

実際に施主さまからも「体感温度が以前と比較にならないほど暖かく、家の中がとても快適になった」というご感想をいただいております。保温効果が高まると温度ムラが改善して体感温度の改善に繋がることがおわかりいただけたのではないでしょうか。

まとめ

今回は床下断熱リフォームの効果について検証していきました。いずれの建物でも床下の断熱材の交換によって室内の温度環境の改善ができていることがわかっていただけたかと思います。

冬場に床が冷たくて困っている…、寒さを解消したい…、冬に寒い原因がわからない…。お部屋を暖めても足元が寒い…ということであれば床下断熱を検討してみてはいかがでしょうか。

矢崎
矢崎
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1974年の創業から50年を超える歴史を持ち、住宅メーカーなど1200社以上の住宅のプロとも取引実績を持つ当社。日本でも数少ない断熱リフォーム専門店として、断熱工事に関するあらゆるお困りごとを解消すべく、技術とサービスを磨いて参りました。断熱性能は快適な暮らしを守る影の立役者。私どもはその裏方の仕事に誇りを持ち、期待を超える品質でお応えします。

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